新スプリアス規格(新技適)の目的とその影響について
2020年10月6日(火)
無線に関わりが有る方は既には「新技適」と言われる「新スプリアス規格」の事はご存じであると共にご対応を行っているものと思います。
まだご存じで無い方もいらっしゃると思いますので、今回はこの規格の目的とその影響について説明を致します。
(追記 21/6/24)新スプリアス規格(新技適)の適用は延期へ
新スプリアス規格とは?
まずスプリアスの意味を説明します。日本語で一言で表記すると「不要発射電波」になります。
電波を通信に使用する場合、周波数を設定します。設定した周波数を前後して一定の幅にも電波が出ており、この電波の出ている部分を周波数帯域と称します。周波数帯域内において通信に使用する中央の内側を必要周波数帯とした場合、その外側がスプリアスとなります。
上記画像をご覧の通り、周波数を横列に、送信電力(パワー)を縦列にして視認化すると設定の周波数を頂点として富士山の形状になります。
新スプリアス規格の目的は?
2005年に新スプリアス規格が施行される以前は、スプリアスに関する規定が緩く、富士山に例えると麓(ふもと)の部分が広く張り出したり宝永山のように山が出現するなど隣接する周波数に対し混信を与え易い要素が有りました。
電波の利用者が少なかった時代は隣接した周波数を使わない運用で混信を回避ができましたが、電波の利用が過密化してくる将来は運用による回避が困難になるとの予測から世界無線通信会議(WRC)がスプリアス規制の制定を行い、日本もこれに合わせて新スプリアス規格の施行に至りました。
新スプリアス規格の影響は?
正式な名称ではありませんが、無線機器の業界では新スプリアス規格による技適が適用された機器を新技適、適用以前の機器を旧技適と称して区分しています。既に旧技適機は、例外無く2022年11月30日までには全ての利用を停止する事が定められています。
利用を停止しなかった場合については、罰則の適用が有り、100万円以下の罰金または、5年以下の懲役となります。
無線機器の業界では重大な問題として捉えられており、これを「2022年問題」と称されています。
参考にならない技適マーク
技適マークには2種類ありますが、新技適であるかの判別は技適マークだけでは出来ません。製造メーカーに問い合わせましょう。
(1995年3月以前の技適マークは間違いなく旧技適になります)
影響を受ける機器は?
最も影響が受けるのは、旧技適(2005年11月30日以前の技適)で認証を受けた無線機器です。古くから利用が有る無線機器には注意が必要です。
新スプリアス規格が適用された新技適は、2005年12月1日から施行されていますが、2010年代以後も新技適を取り直さず旧技適のまま生産や販売が行われている無線機器も存在していましたので、購入時期だけで新技適であるとの判断は出来ません。
ざっくりですが、5年以上使用している無線機器が有りましたら新技適が取得されているか確認する事をお勧めします。
・組込用無線モジュール
設備などケースに収納されて現認が出来ない事が多いので要注意です。設置を行った業者にご確認下さい。
・ETC車載機
普及初期のETC車載機が対象になります。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。
・PHS/コードレス電話
個人用の他、構内電話のワイヤレス通話用に使用されています。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。
・ワイヤレスマイク
ホールやスタジアム、会議室など多くの場所で利用されています。特にB型ワイヤレスマイクは、完全に旧技適なので要注意です。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。
・業務用無線機
用途を業務に限定して免許されている無線機です。特にアナログ波使用の機種は、完全に旧技適なので要注意です。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。
・アマチュア無線機
個人の趣味向けの無線機です。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。スペック的に新スプリアス規格に合致できる旧技適の無線機に対しては、JARDが有償で継続利用のための保証認定を請負っています。
・特定小電力トランシーバー
交通誘導やレジャー用に広く普及している免許不要の無線機です。旧技適の型番は、メーカーのホームページで確認下さい。
・市民ラジオ
昭和の時代に普及していた免許不要の無線機です。一部の特定機種については、個人事業者が有償で新技適機への改造を行っています。
参照ホームページ
総務省「無線機器のスプリアスの規格が変わりました」
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/ru/file/spurious_leaf.pdf
総務省「旧スプリアス規格の無線機器への対応に関するQ&A 」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000377958.pdf
以上です。
新技適の取得に関しますご相談は、弊社までご相談下さい。(高周波回路設計・開発サービス)